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冲方丁 / 天地明察

司馬遼太郎「花神」を読んだ時に主人公の村田蔵六に憧れたりしたけど(正直、今となってはあの性格は朴訥すぎてどうかと思う。笑)、今の自分が理想とする人間像は、もしかしたら冲方さんが描く渋川春海のような人なのかもしれない、なんて思う。
それほど入れ込んで読めた。

この本を時代小説と紹介してしまっていいのかどうかは難しい。いや時代小説なんだけど、そうやって紹介すると読む前に身構えてしまう人もいるだろうし、そういうぐらいの人達にこそ読んで欲しいテーマの作品であるようにも思う。
帯には「合戦も剣客もない時代小説」なんて書かれているが、そもそも作中ほとんど抜刀していない。(ちなみに武士は沢山登場する。)

主人公は渋川春海。日本独自の暦である貞享暦を作った人物として教科書には絶対登場している人物だけど、おそらくほとんどの人は、覚えていないだろう。あるいは、超必死になって穴埋め問題の人名を暗記した嫌な記憶と、セットになっているかもしれない。
ただ、彼を取り巻く人物達はかなり豪華だ。
酒井忠清、保科正之、水戸光国、山崎闇斎……。
数学が好きな人なら関孝和、囲碁が好きな人なら本因坊道策あたりは知っているだろう(恥ずかしながら、自分は調べるまで道策という人物を知らなかったけど)

そういった人々に期待されつつ、支えられつつ、そしていくつもの失敗と挫折を繰り返しながら、春海は人生をかけた「勝負」に挑んでいく。
彼より優れた才をもった(と彼自身が感じる)人間が周りにはいくらでもいるが、しかし彼という存在が実は多くの人に希望や指針を与えていた。そしてそんな性格だからこそ、さらに多くの人々の支援を得、そして支えてくれる伴侶も得た。

なんか、夢物語のようで(実際、この作品の主要人物には悪人という悪人が存在しなくてやや現実味がない)、それでも素敵な生き様だと感じざるを得ない。

読んだ後に、とにかく心地よいすがすがしさが残る。
これは凄い小説を読んでしまった、と思った。

強いて言うなら、春海が最後に打った手について、もう少し掘り下げて描写してほしかった。
それまでの実直なイメージとずれるから描かなかったのかもしれないけれど、最初の一年間の丁寧な描写に比べると雑には感じた。

そうそう、そういえばふと思い出したのだけど、東北大学図書館って、和算に関する資料がかなり膨大な数資料として残っていたんじゃなかったっけか。
全然理解できないと思うけど、ふとその息吹に触れてみたいなぁと思ったり。

天地明察

  • 天地明察
  • 著:冲方 丁
  • 出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)
  • 発売日:2009/12/01

アナログフィッシュ / Life Goes On

Life Goes On

  • Life Goes On
  • アーティスト:アナログフィッシュ
  • レーベル:ブルースインターアクションズ
  • 発売日:2010/02/10

ドラム斉藤さんの復帰作!
様々な事情や変遷がある中で、それでも1年半に一度のペースで彼らの新しい音源を聴けるのはとても嬉しい。
斉藤さんが不在の間アナログフィッシュのライブを支え続けた、ビッツ君と木村さんの演奏も盛り込まれ、まさに5人によるアルバムという感じだ。

ところで今回のアルバム、音的には非常に荒削りでローファイな気がする。
これは、収録されている曲の半分以上をライブで聴いたことがあるからそう感じるだけだろうか?
斉藤さんのスネアの音が低くなったのも、印象に影響を与えてるかもしれない。

そういった作りもあってか、音全体のキャッチーさを見ると、前作の「Fish My Life」の方がぱっと聴きやすいというか、初めての人には薦めやすい感じがする。

ただ、下岡さん・佐々木さんの書く歌詞の内容は前作以上に前向きで(相変わらずひねくれたポジティブさではある)、それは今の彼らの決意表明、あるいは間違いなく療養時の斉藤さんへのメッセージなんだけど、ぐっとくる。アルバム全体を通してぐっとくる。

両氏の「Life goes on」「Ready Steady Go」という曲名が、それぞれアルバムの色を否応なしににおわせている。
こんな示唆的なタイトル今までそんなになかったよね。

ただ基本は、相変わらずリフレインあり、ハーモニーあり、佐々木さんのねっとりした曲あり、のアナログフィッシュらしいアルバム。
「平行」は公式?のPVもYoutubeにあるので、ぜひ聴いてみてください。

the recmute 2010年初ライブ

ごめんなさい!!(メンバー一同的な意味で)

次頑張ります! 2/27(土)よろしくです!

  1. Dead Stock Paradise
  2. ターミナル・ヘヴンズ・ロック
  3. 滑走路(オリジナル・初披露)
  4. Sick Vibration
  5. Mono Cycle(オリジナル)
  6. アナザーモーニング
  7. Please Mr. Lostman(初披露)
  8. Beehive
  9. その未来は今
  10. Swanky Street
  11. ハイブリッド レインボウ

平坂読 / 僕は友達が少ない

タイトルが前回の記事の本と似てるのは偶然です。
高校の部活動がテーマなのも偶然です。

キャラ紹介を兼ねつつショートショートのようにテンポよく進んでいく話のうまさに、あまりにも残念なネタのオンパレードが重なって、めちゃくちゃ読みやすい、そして面白かった。
ネットで流行したネタをそのまま流用したようなものから巧妙なオマージュまで隠されているようで、その全部はわからないけど十分に楽しめる作品だと思う。

でもまぁ、これどうなんだろう?
「僕は友達が少ない」という割と示唆的なタイトルをつけておきながら、肝心のストーリーになんら面白味がないというのが、本当の意味で残念でもあるかな。ヒロインと主人公の関係・エピソードは、どちらも使い古されたフォーマットだし。

確かに、「友達が少ない」という悩みを内心の葛藤とか外部との関係性の中で赤裸々に綴りだしたら、それはもはやラノベではなくて純文学的になってしまうのだろうけど、だからといって、ラノベ読者層である少年少女たちが割と真剣に抱えているであろう「友達が少ない」という問題を提起したにも関わらず、なんら現実味のないハーレム話だけで解決を図っていくというのは、裏切りにすら思える。
ライトノベルってこんなんでいいの? という。

まとめてしまえばこの本は、いい年してラノベ離れできない大きなお兄さん向けの本でしかないということか。

僕は友達が少ない (MF文庫J)

長嶋有 / 僕は落ち着きがない

書店でこの本を見かけた時、帯にはこんな一文が引用されていた。

人って、生きにくいものだ。
みんなみんな、本当の気持ちを言っているのかな?

あとは、「文化系“部室小説”の誕生!」というアオリ、そして『僕は落ち着きがない』というタイトル。
一気に興味を惹かれて、買ってしまった。(小説のジャケ買いなんて生まれて初めてだった)
この本が、私が長嶋有に興味をもったきっかけとなった(つまり読了したのは、『猛スピードで母は』や『ジャージの二人』よりこっちが先だった)。

帯の問いかけに答えが出せないように、この小説自体にも、明確な答え(というか、問いかけ)はないように思える。
物語を追いかけているというよりは、文化系の高校生達が学校生活を送るという、その空気自体を楽しむような、そんな感覚で読み進めていた。

いや、一応、事件とかも起こる。だけどそれも含めて、自分自身が少年だったころに感じていたであろう空気……つまり楽しさや期待や不安や、そういったものに置き換えて感じられた。高校生当時に言葉にならなかったいろんな想いとか経験とかが、この本の中で文章として詰まっているような錯覚を覚えるのだ。

主人公達の日常に「あるある」と思ったり、主人公の望美がそっと胸の内(=地の文)で考えたり感じていることに共感したり、そういうことができれば、この小説は特別なものになるだろう。逆にいえば、その辺共有できないと、この小説を読んでも面白さはピンとこないのかもしれない。

ちょっとだけネタバレになるけど、望美はきっと自分のことを、冷静に周りを観察して色々なことを考えて慎重に行動している人間、とでも思っていたことだろう。でも実はそんな彼女は、傍から見ていたら、いつもキョロキョロしていて、ふわふわ動き回って、ユニークな意見をいう、そんな面白い少女に見えていたんじゃないだろうか。
「僕は落ち着きがない」とはそういうことなんじゃないかな、と。

「うるせえ、俺はおまえが嫌いだ!」

そんな理不尽な啖呵を切ってでも守りたい場所が、あるだろうか。
幸い、自分にはある。

「皆、誰かに期待なんかしないで、皆、勝手に生きててよ」

それはとても難しいことだと、思った。

ぼくは落ち着きがない

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